これは、「ほくろ戦隊ダイブツダー!」シリーズの続編に当たるSSです。
キャラクターの関係が複雑ですので、できれば順にお読みくださいませ。
むしろ、これだけ読むと意味が分からない自信があります。はい。
全部読んだけど、よく分からんという方は(ごもっとも!)、
資料室(同窓別窓)をご参照ください。



ほくろ戦隊ダイブツダー!
〜さよなら正義の味方!

<冒頭文企画連動SS>



<第一話>

「大石ぃ、聞いてよ。」
 今日もテニスコートでは元気な菊丸英二の声が聞こえている。
「なんだい、英二。」
 いつもどおりの穏やかな大石の声。

 何でもない普通の平和。
 何も起こらない平凡な幸せ。
 急に息ができなくなったような感覚を覚え、桔平は唇をかみしめる。
 不動峰のテニスコートでボールを打ち合っている仲間たちの姿。
 そして振り返れば部室の窓辺でくつろぐ友がいる。

「なぁ、この前のミニテストだけどさ。」
 東方が指し示すプリントを眺め。
「計算間違ってるんじゃないのか?ここ。」
 シャーペンで数式を指し示す南。

 平和で幸せで。
 このまま、いつまでもずっとこの平和が、この幸せが続いてくれれば。
 そんなコトを望むのは許されないことなのだろうか。正義に生きると誓った自分には……。

「正義のために戦うのにぴったりの良い天気だ。なぁ、樺地?」
 樺地と跡部がテニスコートから戻ってくる。秘密基地の窓の向こうの青空に跡部は目を細めて。
「うす。」
 樺地があいづちを打つ。

 平凡でも良い。幸せならそれで良い。
 大切な仲間たちが幸せでいてくれるなら。
 だが。

 もうすぐダイブツダー会議が始まる。早めに来てボールを打ち合っていた仲間たちが部室へと戻ってくる。
「本当に正義にぴったりの良い天気っすね。」
 人の良い石田のよく分からない同意の声に。
「こんな日は、正義も悪も関係なく、のんびりしたい気もしますけどね。俺は。」
 桜井が笑った。

 だが。
 こいつらの平和を脅かしているのは誰だ?
 この大切な仲間たちを戦場に追い立てているのは俺ではないのか……?

「お兄ちゃん?どうしたの?」
 杏が心配そうに桔平の顔を覗き込む。

 こいつらを戦いに巻き込んで、危険にさらしているのは俺ではないのか?
 こいつらに一緒に戦ってほしいなどと望むのは、俺の弱さではないのか?
 こいつらの平和と幸せをぶちこわしているのは俺ではないのか?

 気が付くと、秘密基地にいる全員が不安そうに桔平を見ていた。
 いつもの会議が始まる前の沈黙とは違う、桔平を気遣うような瞳。
 温かい優しい空気が夏の匂いの中に満ちていた。
「どうしたんだ?橘。」
 沈黙を打ち破って大石が声を掛ける。
「何か心配ごとでもあるのか?」
 丁寧にプリントをたたみながら、南が問う。

 俺は強い。
 俺は一人でも戦える。
 だから。




「……解散しよう。」
 まっすぐな瞳で桔平が唐突に宣言した。
「ダイブツダーは解散する。もう正義の味方ごっこはおしまいだ。」
 お前たちをこれ以上危険な目に遭わせたくはない。
 戦うのは……危険な橋を渡るのは俺一人で十分だ。

 桔平の声に、一同は凍り付く。
 そして跡部が低く唸った。
「嘘だろう?橘……!」
「本当だ。俺が決めた。」
 跡部はしばらく桔平をにらみつけていたが、臆することなくにらみ返す桔平から目をそらすと、椅子を蹴って立ち上がる。
「帰るぞ。樺地!」
「……!」 
 樺地は跡部と桔平を見比べた。
「樺地!」
 跡部の声に、樺地は困り果てたように小さな目で何度も瞬きをする。
 黙ったまま南が跡部の腕を引く。軽く舌打ちをして、跡部は元の椅子に座り直した。
「理由を教えてください!橘さん!」
 部屋の隅で沈黙を守っていた桜井が意を決したように声を上げた。
「俺たちは正義の味方ごっこをしていたんじゃない!本気で正義のために戦っていたんです!それなのになぜ突然……!」
 桔平は目を伏せる。
「解散だ。聞こえなかったか?桜井。」
「橘さん!俺の質問にちゃんと答えてください!」
 桔平は答えなかった。
 秘密基地の窓の外には初夏の陽射し。

「英二、帰ろう。」
 唐突に大石が立ち上がる。
「……そう、だね。」
 二度、三度と桔平を振り返りながら菊丸が大石に続く。
「樺地。行くぞ。」
「……うす。」
 跡部、そして樺地。
「今まで楽しかったぜ?じゃあな、橘。」
 低く南が告げる。東方がふぅっと息を吐いた。
「じゃあ、俺たちも失礼します。帰るぞ。桜井。」
 促すように石田が呼ぶと、桜井は目を見開いて石田を振り返った。
 それから俯いて。
「ああ。」
 かすれた声でうめくように頷いた。

 人でいっぱいだった不動峰の部室は、急にがらんとして。
「お兄ちゃん……本気なの?」
 杏の問いに桔平はしばらく沈黙し、それから。
「本気だ。」
 小さく、しかし力強くそう断言した。

第二話
             
☆他力本願企画☆結果☆
ダイブツダー篇。 28票 第二話。
ハリセンジャー篇。 22票
邪の六角篇。 21票
ゴクラクダー篇。 19票 笑顔の力。
悪の立海篇。 16票 悪の掟。
インテリゲンチャー篇。 5票 素敵メガネ。
ゴーヤ王国篇。 2票 ゴーヤの唄。


☆☆15万ヒット記念☆ぷち企画☆☆
<今回のいただき冒頭文>
「大石ぃ、聞いてよ。」
 今日もテニスコートでは元気な菊丸英二の声が聞こえている。
「なんだい、英二。」
 いつもどおりの穏やかな大石の声。

どうもありがとうございました!




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