さよなら正義の味方〜ゴーヤ王国篇。



「みなさん。今こそ東京を私たちの手中に収めるときではないでしょうか?」
 メガネをずり上げながら、木手が提案する。
「東京を守るダイブツダーはすでに解散しました。あとの戦隊など烏合の衆。我らがゴーヤ王国の戦士たちが恐れるに足る戦力ではありません。」
 ゴーヤ王国の未来を担う戦士たちは木手の言葉に顔を見合わせる。
 沖縄の夏は溢れるばかりの太陽に包まれる季節。
 世界は光に満ちて美しかった。
 仲間たちはしばらく沈黙を守った。
 だが。
 木手が言葉を続けようとした矢先に、知念がそれを制するように口を開いた。
「そんなコトより、聞いてくれ。永四郎。」(沖縄方言略)
 メガネをずりあげつつ、知念に目をやる木手。知念は少し緊張した面持ちで切り出す。
「俺、昨日、徹夜でゴーヤ王国国歌の歌詞を考えてきたんだ。」(沖縄方言略)
 ごそごそとポケットから紙を取り出した知念に、仲間たちは尊敬の視線を向ける。
 小さく折りたたんだその紙を、丁寧に開く知念。
「これだ。見てくれ。」(沖縄方言略)
「国歌、ですか。」
 木手も国歌に興味を持ったらしい。その様子に甲斐と平古場はふぅっと安堵の息を吐いた。

 おずおずと差し出された紙を全員で覗き込む。
「……。」(沖縄方言略)
 全員の真剣な眼差しが一枚の紙に集中した。

<ゴーヤ王国国歌>
      作詞:ハイビスカス☆知念
  君と見たゴーヤ色のソレは 今はもう遠いアレになって
  (はいでぇゴーヤ王国!)
  あの時のアレはいわゆるナニだった
  (風よ謳え ゴーヤ王国の唄を!)
  だからきっとパイナップルのように ゼラチンを固めない夢を見ていた
  ブーゲンビリアにも似た 俺たちの未来
  (大地よ謳え ゴーヤ王国の唄を!)
  あの日誓った俺たちのナニな絆に 世界は動き始める
  (はいでぇゴーヤ王国!)
  ちょっとゴーヤみたいな 永遠のアレ
  いつだって思い出すことのない 魂のアレ

 少し不安そうに皆の顔を見回す知念の肩を、田仁志がぽんっと力強く叩く。
「……どうだ?」(沖縄方言略)
「さすがはハイビスカス☆知念だ!」(沖縄方言略)
 その言葉に深く頷く仲間たち。
 木手がくいっとメガネをずりあげた。
「さぁ、俺たちの新しい国歌に曲を付けなくてはなりませんよ。」
 知念の表情がぱぁっと明るくなった。
 他の仲間たちも楽しそうに「おお!」と応じる。
 東京侵略など関係なく、今日も沖縄は素晴らしいお天気に恵まれていた。






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