所在地。




 きらり。
 と、眼鏡が光る。
 インテリゲンチャーの愉快なティータイムのできごと。

 きらり、と、逆光眼鏡をずりあげて、手塚が口を開く。
「俺には常々、疑問に思っていたコトがある。」
 その言葉に、一同は応えるように眼鏡をずりあげ。
 きらり。
 と、眼鏡を光らせた。紅茶の香りがゆっくりと立ち上る。

「神奈川の県庁所在地は横浜市で。埼玉の県庁所在地はさいたま市だが。東京の都庁所在地『東京』ってのは、一体、何だ?」

 忍足は目を伏せ。
 乾はノートを開き。
 野村は埼玉の県庁所在地って浦和じゃなかったっけ、と時代遅れなコトを考え。
 高瀬と北村は、埼玉の名に望郷の念に襲われて涙したのだが。
 そんな中、動じた様子もなく。
 大和が静かに眼鏡を光らせた。

「手塚くん。東京の都庁所在地は確かに新宿ですが。その『東京』というのは。」
 にっこりと微笑んで。
 大和は紅茶のカップに口を付け、そして言葉を継ぐ。
「我らが魂の呼び名、すなわち精神的支柱、言い換えれば伝説としての意義を秘めた永遠の都、あるいは無限の輝き、そう、つまりは時空を越えた憧れであるところの『東京』なのです。」

 手塚は大和を見据え。
 五秒ほど、大和の言った言葉の意味を考えたが。
 考えれば考えるほど、だんだん混乱してきたので。
 とりあえず深く頷いておくことにした。

 きらり、と、一同の眼鏡が光る。
 そんな午後のティータイムのできごとであった。





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