弟。
ルドルフ中学のテニス部部室は、いつでもこぎれいである。
不二はそんなルドルフの雰囲気が好きだった。
こういうこざっぱりしたトコだったら、裕太も居心地良いだろうし。幸せに過ごしてくれているだろうし。
思わずにこにこしながら、部室の隅で、肩身が狭そうな風情で急いで着替えている弟の背中に目をやる。
「ふふ。(にこ)」
「……なんで兄貴がいるんだよ……!!ってか、見んな!!」
「だって……今日はゴクラクダーの秘密会議だし。愛する弟の成長した姿を見たいと思うのは兄として当然の気持ちだろ?(にこ)」
兄が小首をかしげながら、さも当然と言った様子で応じるので。
裕太は会話を打ちきり、逃げるようにテニスコートへと出て行った。
「ねぇ、観月。(にこ)」
「んふ?どうしました。不二くん?」
ゆっくりと視線をめぐらせて、不二は観月を見据え。
「ボクは……裕太の幸せのためにも、東京を護りたいと思う。(少し開眼)」
穏やかに、しかし強い意志を込めて宣言した。
「全くですね。裕太くんのためにも……。んふ。」
裕太が出て行った扉に目をやりながら、二人は優しい気持ちで、東京を護る決意を新たにした。
「……弟って……どうしてこんなに可愛いんだろうね。観月。(にこ)」
冷徹にさえ見える不二が、こんなに温かい笑顔を見せるなんて。
観月は少し感動さえ覚えながら。
ついうっかり。
口を滑らせた。
「そうですか。……実はボクも……弟なんですけどもね。んふ。」
不二と観月は目を見合わせ。
しばらく見つめ合い。
そして。
「ねぇ、観月。裕太って、どうしてこんなに可愛いんだろうね。(にこ)」
「……そうですか。そうですね。」
会話を修正して、事なきを得た。
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