邪なこと。
「バネさん!バネさん!!」
「お。どうした?!剣太郎?」
部活前の時間。黒羽の背中に飛びつく一年部長。
彼は目を輝かせて、こう尋ねた。
「俺、考えたんだけどね!」
「おう!」
「エロ本買うのって、邪かな!!」
すぐそばで話を聞いていた木更津が、一瞬こらえたものの、こらえられなくなったのか、思いっきり吹きだした。
しかし、黒羽は動じる様子もなく。
「剣太郎。良いか。エロ本を買うってのはな。全然邪なコトじゃねぇ。」
と、真剣な目で教え諭す。
「それはな……すっげぇ、当たり前のコトだから。」
「そうなの?!当たり前なの?!」
「おう!飯食ったり風呂入ったりするのと同じくらい、当たり前だ!オトコだったら堂々と買え!!!」
葵は感動したように、目を見開き、自信満々な黒羽の説教に聞き入っている。
そんな黒羽の後ろ頭を、木更津はラケットでぽかりと叩き。
「嘘、教えるんじゃない。」
「そうなの?!嘘なの?!亮さん!!」
今度はきらきらと目を輝かせて、木更津に目をやる葵。
「嘘ってことは、やっぱりエロ本を買うのは、邪なコトなんだね!!」
「……あ。」
「じゃあ、邪な魂を貫くために、俺、買わなきゃだよね!!」
葵は拳を握りしめ、夕陽に向かって、エロ本を買う誓いを立てようと思った。
しかし、まだ午後3時を回ったところだったので。
夕陽が見つからなくて、少しだけがっかりした。
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