これは。
ほくろ戦隊ダイブツダー!」シリーズの続編に当たるSSです。
おそらく第一話だけでも先にお読みになってからの方が、
意味が分かりやすいかと思います。
単独でも読める、かなぁ。はい。

ほくろ戦隊ダイブツダー!
〜眼鏡戦隊インテリゲンチャー!?






 テレビを見ていた大和は、ふぅっと溜息をつき、立ち上がった。
 そして、振り返りおっとりとした手つきでリモコンを取り上げ。
「お消えなさい。」
 呟きながら、電源を切る。それから携帯電話に手を伸ばし、何度かためらった後、しかし意を決して登録された番号を選択した。呼び出しの時間はそう長くはかからず。すぐに出た相手に、姿が見えないままに大和は微笑んで呼びかける。
「室町くんですね?大和です。」
 携帯電話である。まず他の人が出ることもあるまい。
「……みんなに集まってもらいましょう。そろそろ本格的に動き出さなくてはいけません。分かっていますね?場所はこの前指示したとおり。ええ。そう。……不動峰です。」
 室町が何か応じている。その声に何度も頷いて、大和はそっと携帯を切った。
「さぁ。始めましょう。できることから一歩ずつ。」
 ムダに前向きな台詞が、胡散臭い眼鏡に映える。



「橘っ!大変だっ!!」
「どうした?大石。それに菊丸。」
 こちらは不動峰のテニス部部室。しかしそれは世を忍ぶ仮の姿であって。その正体は、ほくろ戦隊ダイブツダーの秘密基地である。名前はまだない。
 飛び込んできた青学ゴールデンコンビに、部室に残っていた桔平と杏、桜井と石田は驚いて振り返る。ぜぃぜぃと戸口で荒い息を繰り返しながら、口を開く菊丸。
「手塚と乾が……!!」
「手塚と乾がどうした?」
「手塚と乾が……正義に目覚めた……!!」
「ほ、ホントか?!菊丸!」
 桔平は目を見開いた。ダイブツダーを結成してどれだけの月日が経ったことだろうか。その間、たゆまず歩み続けて、この平和な東京を護ってきた自分たち。その生き様には胸を張れる。
 しかし。
 もしもっと多くの仲間達が、正義のために立ち上がってくれたなら。
 そんな幸せなことはない。そんな嬉しいことは。
 ありがたい。
 桔平はそっと合掌しようとして、ふと首をかしげる。
「……それは大変なコトなのか?大石。」
「ああ。」
 走ってきたのだろう、額の汗をぬぐいもせず、大石は頷いた。

 窓の外には静かな夕風。
 放課後、部活も終わった後の、優しい西日。

「大変なんだ。橘……。あいつらは……ダイブツダーを狙っている……!」
「狙って……?!」

 そこへ、ばたばたと大きな足音がして。

「大変だ!!橘!!室町が正義に目覚めた!!」
「おい!聞け!橘!!大変なことになった!忍足の野郎が正義に目覚めやがった!!」
 南と跡部が同時に部室に飛び込んでくる。
 その後ろからは東方と樺地が声もなく姿を見せ。
 振り返って、目を見開く桔平に、決断を求める眼差しを向ける。

 ぽくぽくぽく……!

 緊迫した空気を打ち破ったのは、桔平の携帯電話の着メロ(木魚)だった。
「……メールか。……観月からだと?」
 太い指で不器用に受信する桔平。南は密かに、橘って観月の携帯メアド知ってたんだぁとびっくりしたが、別に突っ込むところでもないので、黙っていた。

「……大変です。野村くんが正義に目覚めてしまいました。シナリオにありません。困りましたね。んふ……。」
 低い声で音読する桔平。
 桜井は、桔平に「んふ」と言われた衝撃に涙ぐみ。
 南は、メールにまで「んふ」と書いてしまう観月にちょっと不憫さを感じ。
 東方は、メールを音読する橘ってちょっと可愛いやつだなと思った。

 一同は沈黙する。そして待つ。
 彼らがリーダーとして全面的に信頼する橘桔平が、一体、どういう決断を下すのか。
 何はともあれ、不自然すぎる。唐突にこんなに多くのテニス部員たちが正義に目覚めるだなんて。
 絶対何かがあったはずだ。

「とにかく……状況を整理しよう。桜井、記録を取ってくれ。」
「はい。」
 自らを落ち着かせるように、桔平はゆっくりと天井を見上げ、それから全員の顔を見回した。ベンチに腰を下ろし、あるいは窓に寄りかかって、ほくろ戦士とその後方支援部隊は、静かに桔平の言葉を待っている。
「大石。手塚と乾は一体どんなコトを言い出したんだ?」
「それが……。」
 大石が事情を説明しようと、言葉を選んで口を開いたとき。

 コンコン。
 乾いたノックの音が響く。

「はい?」
 立ち上がって扉を開けに行く石田。警戒するように樺地が石田の背後に立ち、南と大石、そして桔平も軽く身構える。たとえ、何があっても、非戦闘員である仲間達を守れるように、と。
 そして、石田が手を触れる前に。
 扉が開き。

 きらーん!

 眩しい光が部室に満ちた。

「油断せずに行こう。」(手塚)
「データは嘘を付かないよ。」(乾)
「眼鏡の裏には仕掛けがあったりなかったりや。」(忍足)
「ホント、胡散臭いね。忍足くん。あはは!」(野村)
「埼玉に帰りたい……。」(高瀬)
「「気の毒ですがこれが眼鏡と言うもの。」」(柳生?)

『眼鏡戦隊インテリゲンチャー、ただいま参上!』(全員)

 全く統一性のない登場の台詞に、ほくろ戦士達は唖然とする。
 一体、何なんだ。こいつらは。

「手塚!乾!忍足!野村!……それからえっと。」(大石)
「緑山の高瀬です。俺、埼玉に帰りたい。」(高瀬)
「ああ。久し振り。それから、えっとえっと。」(大石)
「「立海の柳生です。覚えたまえ。」」(柳生?)
「二人いるように見えるんだけど……。」(大石)
「「さては君、乱視だな?眼鏡をかけたまえ!」」(柳生?)

 柳生らしき人の声に合わせて、眼鏡戦隊の面々は一斉に眼鏡をずり上げる。
 そのきらーん!というムダな逆光が収まるのを待って、大石は溜息をついた。
 気を遣って、全員の名前を確認したものの。
 最後の一人だけは、どうしてもよく分からない。
 正確に言えば、最後の一人ではない。二人いるのである。同じ顔、同じ格好で、同じ仕草をする男が。
 いや。
 そんなときはどっちかが仁王なのだろうとは分かっているのだが。

「仁王と柳生じゃないの?」(菊丸)
「「失敬な! ワタシは一人ですよ!」」(柳生?)

 本人(たち)がハモって言い張るので。
 人の良いダイブツダーたちは、それ以上突っ込んじゃ可哀想だなと思って、その話題はその辺で終わりにすることにした。
 そもそも、眼鏡戦隊の連中が全く気にしていない様子なので、あんまり気にしても仕方がないことなのかもしれない。
 たぶん、今日の仁王は柳生になりきりたいお年頃なのだろう。そして柳生は別に仁王になりきりたいお年頃ではなかったというわけなのだ。ダイブツダーは勝手に納得することに決めた。

『久し振りですね。みなさん。』
 ふと。
 胡散臭い声が響く。
 声の出所は、忍足の眼鏡。
 桜井は「どうしてそんな変なトコにスピーカーを仕込むんだ!」と、南に突っ込んでもらいたくて泣きそうだったが、南はびっくりしてしまって、突っ込み損なった。

「や、大和先輩……!」(大石)
『ふふ。大石くん。しばらく見ない間に、素敵な前髪をゲットしましたね。』(大和)
 大和の声が、忍足の眼鏡から淡々と聞こえてくる。
 ほくろ戦士達は瞬きを繰り返し、南はようやく突っ込んだほうが良いんじゃないかというコトに気付いたのだが、ちょっとタイミングを逃してしまったので今回は突っ込むのをやめにした。隣でびっくりしまくっている東方は、まだ突っ込むべきだという事実に気付いていない。

「一体、何のマネです。」(大石)
『正義のために……いえ、この街のために戦ってみたくなりましてね。』(大和)
「この街の……ため?」(大石)
 大和の言葉に、大石はそっと桔平を振り返る。桔平はもうしばらく話を聞いた方が良いと判断したのだろう、黙って頷いて見せた。

『知っていますか?大石くん。地方交付税が削減されたコト。』(大和)
「……はい?」(大石)
『そればかりではない。三位一体の改革だって骨抜きです。』(大和)
「えっと。あの。その。」(大石)
『ですから……こんな時代には、正義だ愛だと言っているだけではいけないと気付いたのです。そのような形而上学的概念を弄んだところで、果たしてボクたちに未来があるでしょうか。いや、ない。良いですか?これ、反語表現です。』(大和)
「はぁ。」(大石)
『ボクたちの未来はボクたちの手で勝ち取らなくてはなりません。そのためには……地方の団結が急務です。神奈川だ埼玉だ東京だと言っている場合ではないのですよ。時代は地方の団結、そして地方自治なのです。地方分権の未来が、すぐそこにまで来ているのです。ボクたちはそれを自らの手に収めなくてはなりません。』(大和)
「……はぁ。」(大石)
『ボクは考えました。そのために必要なモノは何か。そして結論を見いだしたのです。必要なのは……眼鏡だと。』(大和)
「…………はぁ。」(大石)
『そこでボクは言いました。手塚くん、君は地方自治の眼鏡になれ。と。Boys be 眼鏡。ええ。つまりはそういうコトです。ボクの考えに賛同してくれた関東各地の眼鏡たちが、今、こうやって活動を始めています。これがボクたちの目覚めた正義の意味です。意味づけを行わない正義などただの言語遊戯に過ぎません。まやかしはもういらないのです。つまりは、行政単位での対立など無意味であって、要するに眼鏡 is all なのですよ!分かってくれますね?』
「………………はぁ。」(大石)

 大和の声に合わせて、高瀬を除いた全員が眼鏡をずり上げる。高瀬は一人泣きそうである。ムリヤリ連れてこられたんだな、と樺地は深く同情した。
 大石はもう一度、桔平を振り返る。これ以上話を聞いても、よく分からないような気がした。とにかく。大和先輩はまた意味不明な企画を考え出して。しかもやる気満々なのだというコトだけは確かだ。

『そんなわけで、大石くん。そしてダイブツダーのみなさん。』
 急に大和の声が変わる。今までの優しい説明口調ではなく、ビジネスライクな口調に転じて。
『君たちも……地方自治の眼鏡になれ!』
 低い声で、威厳に満ちた声で、大和はそう命じた。

 そのとき。
『離ぜ!!俺は埼玉さ帰る!!俺を縛っでどげすんなんす!!』
「航!!」
 忍足の眼鏡から、悲鳴のような声が聞こえ。俯いていた高瀬が弾けたように顔を上げた。
『室町くん。しっかりと北村くんを押さえておいてくださいね。逃げられちゃ困ります。』
『うぃっす。』

 南は頭を抱えた。
 この変な軍団に、室町が入っていないコトを喜んでいたのに。
 室町は本部(推定)にいたのか。
 そうか。本部はサングラス部隊なのか。

『高瀬くん?聞こえますか?』
「……はい。」
『北村くんと一緒に埼玉に帰りたいですよね?』
「……はい。」
『良いお返事です。では、またあとでお会いしましょう。』
「……はい。」

 人質だぁ!と桜井は気付いた。樺地も気付いた。二人は視線を交わし、眼鏡キャラ唯一の中二が、自分でなくて良かった、としみじみとその哀しい喜びを分かち合った。


「そんなわけでな。大石。お前達にも眼鏡をかけてもらう。」(乾)
 きらーん!
「なぜだ?!なぜ、なぜお前達はそんなにも眼鏡を……!」(大石)
「それは……ダイブツダー、お前達と戦いたくないからだよ。理屈じゃない。」(乾)
 きらーん!
 台詞のたびに、眼鏡が光るのがひどく鬱陶しかった。
 大石は縋るように桔平を振り返る。

「橘。石田。特に君たちには眼鏡をかけてもらう必要があるんや。」(忍足)
 きらーん!
「なぜだ?!俺は……スピーカー付きの眼鏡などいらんぞ!」(桔平)
「そう言うなや。眼鏡の奥には仕掛けがあったりなかったりや。とにかくな、不動峰には眼鏡キャラがおらん。それは地方自治の未来にとって由々しき大問題やからな。」(忍足)
 きらーん!
 鬱陶しい眼鏡の光を軽く手のひらで遮りながら、桔平は立ち上がった。
 そして、ほくろ戦士達を見回す。

「お引き取り願おう。俺たちは……眼鏡をかける気はない!」(桔平)
「「橘くん、考え直したまえ。」」(柳生?)
「断る。俺たちには俺たちの正義がある!」(桔平)
「ならば……力ずくで行くしかないね。」(野村)

 後ろで腕を組んで退屈そうにしていた手塚に、乾が一生懸命、事情を説明している。どうやら手塚も状況を理解していないまま、付いてきてしまったらしい。大石は少し安堵し、同時にかなりの不安を感じた。

 きらーん!!
 眼鏡戦隊インテリゲンチャーの面々の眼鏡が、激しく光り。
 一同は眼鏡をずり上げながら、声を揃えて宣言した。
『地方分権☆財源確保☆眼鏡戦隊インテリゲンチャー!ただいま参上!!』
 きらきらーん!!

「勝負なら受けて立つ……表に出ろ。」
 凛々しく戸口を指さす桔平の横顔に、南は深い信頼を覚えながら、このアリエナイ状態に冷静にいられる桔平はもしかしたらちょっとボケすぎているんじゃないかとどきどきした。しかしまぁ、動揺されても困るので、これで良いか、と間髪入れずに思い直した。

 そして。
 不動峰の校庭で、戦いの火ぶたは切って落とされた。

「ほくろ変身!ダイブツダー☆ブラックっ!合掌!!」(橘)
「ほくろ変身!ダイブツダー☆ブルーっ!欣求浄土!!」(大石)
「ほくろ変身!ダイブツダー☆グリーンっ!欣求浄土!!」(南)
「ほくろ変身!ダイブツダー☆ホワイトっ!厭離穢土!!」(石田)
『ほくろ変身!ダイブツダー☆シルバーっ!厭離穢土だ、樺地!!』(本部の跡部)
「うす!」(樺地)

 本部に控える後方支援の仲間達を、眼鏡から護るため。そしてこの東京を守り抜く自らの決意が、偽りではないことを明らかにするため。
 少年達は戦場に立つ。

 しかし。
 眼鏡戦隊は手強かった。
「「受けたまえ!逆光レーザービーム!」」(柳生?)
 どのくらい手強かったかというと、常時不自然な逆光を発しまくっているので、直視することすら難しいのである。
 まして、まともに戦うなど、無理な話。
「くっ!せめて、せめてあの光を遮ることができれば……!」(南)

 そのとき。
『大石!今、あれをやらなくて、いつやるんだよ!』
 本部の菊丸の声が、通信機を通してほくろ戦士達の耳に届いた。一同ははっとする。そうだ。あれだ。あれがあった!!
「ああ。そうだな。英二。……大和先輩、ダイブツには無限の可能性があるんです。」(大石)
 静かに、澄み切った視線で、大石は忍足の眼鏡に目をやった。
 忍足はその視線に気付いて、にやりと笑う。
「眼鏡には何の仕掛けもないで?」(忍足)
「あるだろっ!!」(南)
 まぶしさを堪えて、南の懸命の突っ込み。桜井は本部で涙をぬぐいながら拍手を惜しまなかった。

 ふと、柳生(たち)の眉が上がる。
「「あの陣形は……!」」(柳生?)
 大石が数歩前に出て腰を落として構え。
 その後ろには四人のほくろ戦士。

「ああ。間違いない。あれは……大石のテリトリー!」(乾)
「そうだ。この戦場は俺が支配した……!」(大石)
 低く構えた姿勢のまま、大石はふぅっと深い息をついた。

「「大石くんが冷静にゲームメイクし、後ろにいる四人のほくろ戦士達が大石くんの指示に従って……ダイブツ☆バズーカを撃ってくるつもりですね……!」」(柳生?)
「なんてやつや、大石!日頃から四人の菊丸が飛んだり跳ねたりしてるのを真顔で操っているだけのコトはある!その四人の菊丸を四人のほくろ戦士に替えて戦うとは……!」(忍足)
 一同はそれぞれ眼鏡をずり上げながら、冷静に分析の台詞を吐く。
 なにぶん、全員がそういうキャラなので、鬱陶しいことこの上ない。

「……そして、大石のテリトリーの前には……逆光の効果も消滅する。」(手塚)
「なぜです?手塚くん?」(野村)
「なぜなら……それが大石のテリトリーだからだ。」(手塚)
「理屈じゃない!」(乾)

 ご無体な!
 と。
 眼鏡戦隊の良い子達は思った。
 しかし、手塚が言うのだから間違いないだろう。

「さぁ。落ち着いて行こう。」(大石)
 額の汗をぬぐいながら、大石が静かに声を掛ける。
 背後のほくろ戦士達は、いつでもダイブツ☆バズーカを放てるように身構えていて。
「……どないする?乾?」(忍足)
「厳しい勝負になってきたな。ふむ。」(乾)

「埼玉に帰りたい……。」
 寂しげな高瀬の眼鏡が涙に光った。

 そのとき。
 ぽん、と高瀬の肩を叩く人影。
「もう、良いですよ。みなさん。」
 そこにはいつの間に来たのか、大和と室町と北村が立っていた。
「今日のところはこの辺で。そろそろ眼鏡を磨く時間ですから。」
 一同は時計に目をやり。
 同時にぐいっと眼鏡をずりあげた。
「帰りましょう。高瀬くんも北村くんも、もう泣かないでください。埼玉の未来は明るいのです。大丈夫、心配いりませんよ。」(大和)
「なして俺はこんな目に遭わねばならねんだ?」(北村)
「ごめん。航。俺が眼鏡キャラだったばっかりに……!」(高瀬)
「ええ。きっと北村くんも眼鏡が似合いますよ。」(大和)
 胡散臭く、涙ぐむ少年二人を慰めながら、大和祐大は穏やかに微笑んだ。
 そして。
 眼鏡戦隊インテリゲンチャーの面々は、ゆっくりと帰路に就いた。


 ダイブツダーたちにもようやく平安が戻ってくる。変身を解き、額の汗をぬぐって、秘密基地の扉をくぐれば、笑顔で出迎えてくれる仲間がいる。

「よっし!大石!良い感じ!」(菊丸)
「サンキュ、英二!」(大石)

「樺地、てめぇ、眼鏡なんかに負けるんじゃねぇぞ?」(跡部)
「うす!」(樺地)

「そういや、俺、数学の教科書、忘れてきたけど、宿題あったっけ?」(東方)
「今日はないぜ?……たぶん。」(南)

「ずっと気になってたんだけど、なんで『眼鏡』って書いて『めがね』って読むのかな?」(石田)
「お前、ずっと戦場でそんなコト考えてたのか?」(桜井)

 彼らを出迎えてくれる仲間の笑顔があるから、辛い戦いも耐えられる。
 そう。彼らの笑顔を護るためにも。戦いの日はまだ続く。

 東京の平和は守られた。
 しかし、次から次へと新しい勢力が東京を狙っている。
 地方自治に名を借りた眼鏡の侵略を許してはならない。
 決して、全員が眼鏡キャラなテニス漫画にしてはならない。
 桔平は夕方の低く垂れ込めた雲に向かって、正義への誓いを新たにした。
「お兄ちゃん!」
「杏?どうした?」
「ん?今回、台詞がなかったから、呼んでみただけ!」
「……そうか。じゃあ、まぁ、帰るか。杏。」
「うん!」
 平和な夕空の下を。
 この平和がずっと続くように、と。
 祈りながら、桔平は静かに歩き出した。




<次回予告>

「忍足なんて……伊達眼鏡の癖に!!」
「跡部さん、落ち着いて!」
「地方自治だと?!地方分権だと?!」
「跡部さん……!」
「それじゃ俺様が将来、日本の支配者になったときにいろいろ面倒じゃねぇか!」
「跡部さん……?」
「桜井、よく覚えておけ!中央集権こそが正義だ!」
「は、はい……。」

「で、なんだ?次回は。」
「跡部さんと戦う日が来ないことを俺は祈っています……。」
「あーん?桜井、てめぇ。正義の心を捨てるつもりか?!」
「え、いえ。俺は決してそんなコト……!!」

次回! 悪の名の下に! お楽しみに!






またキャラが増えてしまった上に。
ホントに続いたりもしました。
悪の名の下に!?
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