伝言ゲーム〜氷帝おまけ篇3〜
「樺地……。どこへ行くんだ?」
鞄の中から、厚手のタオルと小さな袋を取り出し、すたすたとどこかへ向かう樺地に、鳳が声を掛ける。
樺地は静かに、眼差しを校庭の隅の鶏小屋に向け。
「へ?鶏小屋?」
鳳の言葉に、おっとりと頷いた。
その瞬間、鳳は思い出す。
跡部が、今週の鶏小屋当番だった、ということを。
鶏小屋当番。
それは。
氷帝中学の三年生の持ち回りの仕事。
小屋の掃除や朝晩の餌やりなどが重要な仕事なのだが。
もう一つ、忘れちゃいけないコトがある。
その鶏たちは、毎日午後3時過ぎに卵を産むのである。
何度か卵がネコに奪われていたために、鶏小屋当番たちは、毎日午後3時過ぎになると、小屋まで卵の有無を確認しに行く。
そして、卵があれば、それを教員室の冷蔵庫に入れるのである。
その卵は、食堂で使われているとも、榊監督の卵かけご飯に使われているとも言われているが、真偽のほどは定かではない。
……しかし、なんでそれを樺地が代行しているんだ??
監督の下から戻ってきた跡部に、宍戸がおそるおそる声を掛ける。
「結局、さっきの伝言、どういう意味だったんだよ?」
「あ〜ん?宍戸、てめぇ、ホント頭悪いな。」
「……。」
「良いか?あれはな!卵だ、もう卵産む時間だから、早いトコ採りに行かないとやばいぞ、っていうコトだ!」
「……。」
「全く。他にありえねぇだろ?」
ありえないのはむしろ、樺地の理解力だ、と宍戸は思った。
……それにしても、なんで当番を樺地が代行しているんだ??
しかし、宍戸の思考が迷いの森に入り込む前に。
「お〜い!宍戸!早くコートに入れ!」
こちらの世界に彼を呼び戻す声がして。
宍戸は、正直、助かった、と思った。
跡部の考えを理解しようなんて思っちゃいけない。
ラケットを握り直し、宍戸は小さく深呼吸をした。
☆☆おまけのおまけ☆☆
鶏小屋の中で。
樺地は、産みたての卵を一つ、鳳に差し出す。
「え?くれるの?ってか、ここで食えっての?」
「……。」(こくりと頷く。)
「勝手に食べちゃまずいだろ?……俺、卵、飲むの、好きだけど。」
「……!!!」
「……あ!別に殻ごと呑みこむ訳じゃないぞ!生で飲むだけだぞ!」
「……。」(かなりがっかり。)
今日も鶏小屋での時間は和やかに平和に過ぎてゆく。
金網におでこをくっつけて、中を覗いていた向日は。
「そっか。鳳は卵を殻ごと食うから、カルシウム満点で、そんなに優しいのか!」
と、激しく納得した。
「向日さんまで!信じないでくださいよ!」
鳳の必死の弁明にも耳を貸さず、向日はにっこりと微笑んで、日吉を振り返る。
「日吉〜!お前も鳳見習って、卵丸飲みすれば?」
「……!!」きぃぃぃぃん!!
「いや、ポーズは良いから!ってか、若も!信じるなよ!!」
収拾がつかないオチですね……。
ごめんなさい!!
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