◇ご注意◇
この物語はパラレルです。過去話ではありません〜。
原作のG150があまりにもしゃれにならないので、
しゃれになる話に仕立て直しただけなのです。
寛大な心でお読み下さいませ。




仁義なき戦い。

〜ねぇ、じんぎってなぁに?〜
〜ふふ。知りたいの?英二……。〜
〜ふにゃ!知らなくていいっ!〜

 ここは木の実(このみ)幼稚園。
 都内の良い子達が、にこにこ元気に通っています。
 さぁ、中はどんな様子かな?さっそく、のぞいてみましょう!

 年長さん達はお帰りの時間です。
 おやおや?さかき組の跡部景吾くん(5歳)が、不機嫌そうにお庭をふらふらしていますよ?どうやら、年中組の樺地崇弘くん(4歳)を待っているみたい。でも、年中さんは、来週のお遊戯会のために、お遊戯の特訓で帰りの時間が遅いのです。
「ちぇっ。崇弘、遅い!みんなもどこ行っちゃったんだよ。」
 さかき組のお友達ともはぐれちゃったみたいですね。大丈夫かな?

 ジャングルジムを椅子代わりに、座ってご本を読んでいる子がいました。スミレ組の手塚国光くん(5歳)ですね。
 そういえばさっき、スミレ組の仲良しさん達が、裏庭で栽培されている椎茸を見にわらわらと走っていきました。たぶん、国光くんは椎茸よりも、「こどものとも」の最新号が気になったんですね。ところで、普通、幼稚園の裏庭って椎茸を栽培していたりするモノなんでしょうかね。うちの幼稚園が特殊なのかしら。

 おや?景吾くんが国光くんの方へ、足音を忍ばせて近づいていきますよ。
 そして。
 静かにご本を読んでいた国光くんの眼鏡を、ささっ!と取ってしまいました。
 何をされたのは解らず、きょとんとする国光くんを、景吾くんは。
「やーい、やーい、ばかてづか〜〜!ばかてづか〜〜!!」
 と、囃し立てます。景吾くんってば、崇弘くんが遅い上にお友達とはぐれて、悪い子になっちゃったみたい。俺なんか拗ねちゃったもんね、悪いコトしちゃうもんねって感じです。
「人のものを取っちゃ、いけないんだぞ。」
「文句あるかよ?あーん?」
「あーん?って言っちゃダメだって、先生言ってたじゃないか。」
「いいんだもん。おれ、悪い子だからっ!」
 そう言いながらも、景吾くんは国光くんに眼鏡を返してあげました。

 それから景吾くんはお砂場に向かいます。国光くんも何をするのか気になる様子。ジャングルジムにご本を置いて、砂場をのぞきこみました。
 景吾くんはしばらく砂場をぐるぐる回っていましたが、片づけ忘れたシャベルを見付けると、気合いを入れて、ざくざくとお砂場を掘り始めたのでした。
「何してる?」
「……落とし穴を掘っているわけじゃないぞ!!」
 景吾くんは、落とし穴を掘るなんて悪いことをしている上に、嘘まで付いてしまいました。こんな悪いことばっかりするのは、生まれて初めてです。どきどきしながら、一生懸命、穴掘りを続けます。
「手伝おうか?」
「お前を落とす落とし穴を掘っているのに、手伝わせちゃおかしいだろ!」
「……そうか?」
 景吾くんは完璧な論理だ!と思いましたが、国光くんはそれに気付いた様子もなく、少し首を傾げてからジャングルジムに戻って「こどものくに」を広げました。

「できた〜〜〜!!」
 爽やかな声がお庭に響き渡ります。なんとも大きな落とし穴が、お砂場の真ん中にどどーんとできあがっていますよ。景吾くん、遊び終わったら、きちんと埋めてから帰りましょうね。
「もういいのか?」
「ああ、満足した。」
 やっぱり興味があったらしく、景吾くんの掘った穴の横にしゃがんで中をのぞきこむ国光くん。
「すごいな。」
「だろ?おれさまのびぎによえ!」
「……?」
 景吾くんはとても難しい言葉を使ってみましたが、国光くんには通じませんでしたね。普通はこんなこと、言う人はいませんよ。景吾くん。さかき組の先生に、もっと話し言葉の練習をしてもらった方がいいようですね。まぁ、さかき組の先生も、少し不思議な日本語をお使いですが。

 国光くんは、落とし穴の中をじっくり観察しています。すると、景吾くんは再び足音を忍ばせ、国光くんの背後に回りましたよ?何をする気なのかしら?
「くらえ!はめつのろんどっっっ!!」
 耳元で大声を出して、国光くんを驚かしちゃいました。今日の景吾くんは、本当に悪い子ですね。
 あ。
 びっくりした国光くんは。
 ころりん。
 と、落とし穴の中に落ちちゃいました!
 頬から腕から砂まみれ。お膝は少しすりむいています。
 何が起こったのか分からず、呆然とする国光くん。
 こんなことになるとは思わず、凍り付く景吾くん。
 景吾くんは、落とし穴に落ちそうになって、びっくりわたわたする国光くんを、からかってやろうと思っていただけだったのです。それなのに、本当に落ちてしまうなんて。
 落とし穴はとても大きく掘ってあったので、国光くんが中にぺたりと座り込むと、肩の辺りまで地中に埋まってしまっています。

「……。」(こういうとき何と言っていいのか分からない国光くん。)
「……。」(ごめん!と言うにはプライドが邪魔で、ばーか!と言うには良心が邪魔な景吾くん。)

 そのとき。
「国光くんをいじめるな〜〜〜〜っ!!」
 裏庭から、菊丸英二くん(5歳)と不二周助くん(5歳)が手を繋いで、全力で走ってくるのが見えました。その声を聞きつけて、椎茸に見飽きたらしいスミレ組のお友達が続々と飛び出してきます。
 さすがにこのまま座っているのは変だ、と気付いた国光くんは、よいしょっ!とばかりに頑張って落とし穴から脱出。立ち上がってみれば、それほど深い穴ではなかったようなのです。良かったですね。
 悪い子にはなりたかったけど、「いじめっ子」は少しかっこわるい気がしていた硬派な景吾くんは、英二くんと周助くんの声に、どきっとしました。そして少しおろおろしました。

 気が付くと、スミレ組の子達に取り囲まれてしまった景吾くん。
 乾貞治くん(6歳)は国光くんの眼鏡を拭いてあげています。大石秀一郎くん(6歳)は国光くんの服や髪から砂を払ってあげました。
 そして。
 周助くんはにっこり笑って。
「無事で良かったよ。国光くん。ボクはてっきり、景吾くんに生き埋めぷれいされているのかと、わくわく、じゃなかった、どきどきしちゃったよ☆」

 そんなこと、思いつく幼稚園児はお前だけだろっ!と、スミレ組の仲良しさん達が心の中で突っ込んだことは、誰にも秘密です。

 さて、すっかりスミレ組の良い子達に包囲されて、四面楚歌ピンチ大爆発の景吾くんでしたが。救いの天使が現れましたね。年中組のお遊戯の練習が終わったみたいですよ。
「崇弘〜〜!!」
 お遊戯室とは逆のお庭の端っこにいるのに、崇弘くんはしっかりと景吾くんのことを見付けて、助けに来てくれました。年中さんとは思えない大きな体の後ろに、こっそり隠れようとする景吾くん。崇弘くんが来たら、もう悪い子ごっこをする必要はないですものね。
「どうしたの?景ちゃん。」
「う〜。あいつらと遊んでやっていただけだ。」
 ただならぬ気配に、困惑したようにスミレ組のお友達を見回す崇弘くん。目が合った周助くんは優しく微笑むと、こう言いました。
「景吾くんが国光くんをなぶって、いたぶって、いじくりまわしたうえに、なぐさみものにしていたんだよ。」(さすがの周助くんも途中から台詞がひらがな化しました。)
 なんだかさっぱり分かっていないけど、景吾くんが悪いらしいと察した崇弘くんは、後ろでこっそり威張っていた景吾くんのおでこに、人差し指をぴしっと当てました。
「景ちゃん!めっ!!」
 あらあら、年中さんに怒られちゃいましたね。でも、悪い子になりたかったんだから、本望かしら?

 あら、そうこうしているうちに、さかき組のお友達が集まってきましたよ。
「景吾くん、ここにいたんだ。探していたんだぞ。」
「あれ、崇弘くんもいる!お遊戯終わったらすぐ来たの?」
「あ。亮くん。それに長太郎くんも。」
 良かったですね。さかき組の仲良しさん達は、やっぱり景吾くんのことを捜してくれていたみたいです。
「早く公園に行こうぜっ!侑士、今日もブランコの二人乗り、しような。」
「うん。しよしよ。」
 そうでした。今日はみんなで、公園に行く約束をしていたんです。楽しんできてね。さかき組の良い子達!
 嬉しそうにお友達と手を繋いで、景吾くんは幼稚園を後にしました。

「変なの〜。さかき組のやつらって、変なの〜〜。」
「こら、英二。そんなこと言っちゃダメだよ。」
「だって、変じゃん。」
 スミレ組の仲良しさん達は、仲良く景吾くんの掘った落とし穴を埋め戻しました。景吾くんの穴なのに、と、英二くんは口をとがらせていましたが、河村隆くん(5歳)になだめられて、良い子になりましたよ。お砂場はあっという間に元通りに。偉かったね。みんな。
「さかき組は変だとは言え、なかなかの実力者揃いだからな。手強い相手には違いない。」
「そうだね、貞治くん。ジローくんっていう子は、この前、ボクの可愛い可愛い弟を泣かしたって言うし。ふふ。来週のお遊戯会が楽しみだな。」
「ふむ。スミレ組がさかき組に負けるわけにはいかない。今度のお遊戯会も、油断せずに行こう!」
 国光くんの声に、スミレ組の良い子達は、力強く頷きました。
 来週のお遊戯会がとても楽しみですね!
 それからみんなは、隆くんのおうちに仲良く遊びに行ったのでした。

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 詳しいことは一階受付窓口まで♪



桂木さんから素敵なイラストを頂きました!!
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