これは、「ほくろ戦隊ダイブツダー!」シリーズの続編に当たるSSです。
キャラクターの関係が複雑ですので、できれば順にお読みくださいませ。
むしろ、これだけ読むと意味が分からない自信があります。はい。
全部読んだけど、よく分からんという方は(ごもっとも!)、
資料室(同窓別窓)をご参照ください。

ダイブツダー番外篇!
〜邪悪を統べる者!





 朝練が始まる前の六角の邪な部室で。
「サエさん。これ。」
 天根がはがきを佐伯に差し出す。
「あ。さんきゅ。丸井は本当に筆まめだね(爽)。」
 爽やかに笑ってはがきを受け取った佐伯。黒羽は小さく首をかしげて。
「待て。なんで丸井とダビデの文通にサエが混じってるんだ?」
 と極めて順当な突っ込みを入れた。
「やだなぁ、バネ。俺が丸井とダビデの文通なんていうあほらしモノに参加するはずないじゃないか(爽)。」
 はがきを読んでいた視線をすっと上げ、悪気一つ見せずに佐伯は断言して、黒羽にはがきを見せる。
「こいつらの文通、毎回はがきに二行くらいしか文面がないから、余白で柳と俺は情報交換することにしたんだ。合理的だろ?(爽)」
 確かにはがきには、二行ほど大きな字で丸井のコメントが書かれ、八割近い面積を占める残りの部分には几帳面な柳の文字がびっしりと並んでいた。黒羽は黙ってそのはがきを眺め、なんだか少し釈然としないものを感じながら、それを佐伯に返す。
 メールの方が早くて便利なんじゃないか?とか。
 人の、しかも後輩の文通の余白を使うってどうなんだ?とか。
 思ってはみたものの、よく考えたらこの文通方式は極めて邪なコトであるような気がしたので、それもまぁありか、と思い直す。

「来週の土曜、お前らあけておけよ?(爽)」
 再びはがきに目を落として、何か考えていた佐伯が、爽やかににっこりと微笑んで言う。
「何?サエさん!何があるの?!」
 葵がラケットをぶんぶんと振り回しながら目を輝かせる。
「悪の連中と一度正面から戦ってみたいって言ってただろ?剣太郎(爽)。」
「うん!」
「あっちも俺たちと手合わせしたいっていうからさ(爽)。」
「邪と悪の戦い?!面白い!!」
 佐伯の発言に、樹はしゅぽー!と勢いよく息を吐いた。
 ぽかんと口を開けてびっくりしている天根を見て、黒羽は密かに、こいつ、自分のとこに来たはがき、丸井が書いたトコしか読んでないのか?と驚いたが、それはそれで紳士的なあほだなと思い直し、突っ込むのをやめた。

 そして。
 運命の土曜日がやってくる。


「ヒカルくん!俺、たくさんおやつ持ってきた!」
「ブン太くん!俺、たくさんダジャレ考えてきた!」」
 ひしっと抱き合い、再会を喜び合っている丸井と天根を尻目に、悪と邪のメンバーたちは、千葉と神奈川を結ぶアクアライン上に集結していた。悪の神奈川からは真田、柳、ジャッカル、丸井、切原。邪の千葉からは葵、佐伯、黒羽、樹、天根。

「逃げずによく来たと褒めてやろう。」
 真田が傲岸に六角勢を見回した。
「真田さんに褒められちゃったぞ!すごいプレッシャーだ!面白い!」
 楽しくてたまらない様子で葵がはしゃぐ。
「今日こそ……どちらがたまらん悪で、どちらがたまらん邪か、決着をつけようじゃないか。」
「望むところだ!面白い!!」

 いや。
 どっちが悪でどっちが邪かは、決着を付ける前から分かり切っているんじゃねぇのか?
 と、ジャッカルは心の中で一人寂しく突っ込みを入れた。
 だが、相手が真田と葵じゃ、突っ込んでもしょうがねぇよなぁ。
 そんな諦めの心を抱いて、そっと視線をそらすと、同じように視線をそらした黒羽と目が合う。
 ……しょうがねぇよなぁ。
 二人は視線でその思いを分かち合い、少しだけ心が軽くなったのを感じた。

「一対一の勝負でかまわないな?佐伯。勝負の内容はそれぞれ自分たちで決めるということで。」
「ああ。どちらかが負けを認めるか、戦いを続けられなくなるまでの、遠慮無用の真剣勝負で行こう(爽)。」
「良かろう。」
 柳と佐伯は冷静にルールを確認すると一同を見回した。もちろんほかのメンバーに異存のあるはずがない。


<第一試合>  ジャッカル桑原 vs 黒羽春風

 アクアラインのパーキングエリアには強い海風が吹いている。二人は仲間たちに見守られ、中央に歩み出た。

「どっちが勝っても恨みっこなしだぜ?」
「……そうもいかない。」
 黒羽の言葉にジャッカルが困ったように応じた。
「お前は恨みっこなしでいいかもしれないが、俺はどっちが勝っても恨みっこありだ。」
「恨みっこありなのか?!」
「おう。」
 黒羽はびっくりした様子で立海のメンバーに目をやる。
「特にブン太は俺が負ける方におやつを賭けているし、赤也は俺が勝つ方に弁当を賭けている。食い物の恨みほど恐ろしいモノはない。」
「怖ぇ学校だな。悪の立海……!」
 それでもジャッカルは手の中で紫のストップウォッチを軽く玩びながら、黒羽ににやりと笑いかけた。
「まぁ、いい。始めようか。」
 しかし、ジャッカルの開始宣言に黒羽は応えなかった。そしてしばらく何かを考えていたが。
「ところで、俺ら、なんで戦うんだ?」
 極めて基本的な疑問を口にした。
「……何でだろうな?」
 実はジャッカルも全然分かっていなかった。
 それから二人はじっと見つめ合う。黒羽は腕を組んで、ジャッカルは軽く身構えた姿勢で。夏の光が彼らを包み、静かに時が過ぎてゆく。
 ――ってか戦う意味あんのか?
 ――よく分からんが、あまり意味があるとも思えねぇな。
 ――俺らは単に邪に生きたいだけだし、お前らは東京を侵略するんだろ?
 ――だよなぁ?なんで戦ってんだ?俺ら。
 ――戦わなくていいんじゃねぇの?
 ――そうだな。やめとくか。
 沈黙の中に対話があった。二人は目と目で通じ合い、結論に至った。
 そして、がしっと力強く握手を交わす。

「引き分けだな。黒羽。お前のねばり強さには驚かされたぜ!」
「ああ!良い勝負だったな。ジャッカル!」

 周囲がきょとんとする中で、二人はそれぞれの仲間たちの元へと戻っていく。
「何?どうしたの?」
 葵が尋ねるのを軽くかわして、黒羽は天根にタッチした。
「悪ぃ。勝てなくて。ダビデ、後を頼むぞ。」
 いきなり話を振られて天根は。
「次、俺……?!」
 びっくりしたように、立海の陣に目を向けた。立海の陣地では切原と丸井がジャッカルにすごい剣幕で何かをわめいているが、ジャッカルは気にかける様子もなく、にやりと笑って六角を振り返った。

 第一試合:引き分け!


<第二試合>  切原赤也 vs 天根ヒカル

「俺が噂の切原赤也だ。」
「……うぃ。」

 各陣営で前線を任される二人の戦士は、キッと睨み合った。アスファルトに落ちる濃い影。切原の瞳には強い敵意が宿る。
「ジャッカル先輩の仇……天根ヒカル、潰すよ?」
「……?」
 天根には分からなかった。なんで自分がジャッカルさんの仇なのか。
 分からなかったけど何だかやけに険悪っぽかったので、とりあえず、その場を和まそうと思った。
「……粒を」
「潰すとか言うんじゃねぇぞ!」
「……!」
 ダジャレを盗られて、天根は凍り付く。しかし彼はめげなかった。邪の六角の名に賭けて、ここで負けるわけにはいかなかった。
「人の洒落を盗るのは」
「やめなしゃれとか言ったら、病院送りにしてやるぜ?」
「……!」
 負けない。決して負けない。天根は思った。

 沈黙。
 二人は再び睨み合う。
 緊迫した空気の中、天根はゆっくりと口を開いた。
「バネさんは……俺のダジャレ、最後まで聞いてから……『お前のダジャレは最高につまんねぇんだよっ!』とか……ちゃんと、突っ込んでくれるのに……!」
「ふん。それがどうした!ジャッカル先輩なんか、俺が悪いことしたら、なんでか一緒に殴られんだぞ!」

 痛いほどの緊張がアクアラインを支配する。
 その均衡を破ったのは。

「赤也!ヒカルくんをいじめるな!」

 なぜか、丸井であった。

「な、なんすか?!丸井先輩?!」
「ヒカルくんは俺の友達だ!いじめたら、でこぴんするからな!」
「えっと……?」
「でこぴんだけじゃねぇぞ!しっぺもするからな!お菓子も分けてやんねぇぞ!」

 切原はおろおろと天根と丸井の顔を見比べた。
 天根もおろおろと切原と丸井の顔を見比べた。

 ってか。赤也はブン太の友達じゃねぇのか?
 と、ジャッカルは少しだけ切原を不憫に思ったが、口に出して突っ込むと、一層切原が可哀想な気がしたので、黙っていることにした。
 アスファルトを焦がす陽の光に、切原はがくりと肩を落とした。
「残念だが……今日のところは勝負はお預けということにしておいてやる!」
 天根はびっくりした顔で、きょとんと切原の顔を見る。
 そして。
 そうだよな、お菓子を人質に取られちゃ仕方ないよな、と悪の立海の厳しい掟に驚愕を禁じ得ないまま、小さく頷いた。
「……うぃ。引き分けでいいよ。」

 第二試合:引き分け!


<第三試合>  柳蓮二 vs 樹希彦

「ふむ。樹希彦、か。邪虎丸開発担当者……相手にとって不足はない。」
「いやいや。柳蓮二は教授ですよ。ワルサー開発担当なのね〜。すごいのね〜。」
 樹と柳は握手を交わす。
 両陣営の頭脳とも言える武器開発担当同士の対決。注目の一戦であった。
「柳は手強いのね〜。でも、俺には一つとっておきの技があるのね〜!」
 波の音が遠く聞こえる中、しゅぽー!と樹が気合いを見せた。
「ほぉ。とっておきの技か。見せてもらおう。」
 持ち前の研究熱心さゆえにか、柳は素直に興味を持った様子で、細い目をさらに細める。

「樹ちゃん、あれを使う気だ!!面白い!」
「あれを使った樹ちゃんは無敵だからね!(爽)」
 六角の邪な仲間たちが色めき立つ。その様子に立海の悪の仲間たちも息をのんだ。樹の「あれ」とはいったい……?!

「行くのね〜。邪変身〜邪心坦懐〜なのね〜!」
 しゅぽー!
 樹の激しい鼻息と同時に、あたりは一瞬白く霞んで。
 すぐにまた明るい夏のアクアラインが戻ってくる。

「なんだ?」
 あくまでも冷静に柳がつぶやくと。
「何で〜?何で、柳はびっくりしないの〜?ねぇ、何で〜?」
 樹が目をぱちくりさせた。
「ま、まさか……アニメモードにヴァージョンチェンジしたのか!?」
 ようやく事態を把握して、柳が目を見開く。
「何で?何で目開けたの?何で、目、開けられるのに、いつも開けてないの?何で?青学不二周助のファンだから?でも、何で不二は目開けないの〜?柳のファンだから〜?ねぇ、何で?何で〜?」
「そ、それは……。」
 柳は分析キャラであり、解説キャラである。となれば、ほかのキャラから説明を求められたとき、反射的に解説をしなくてはいけない気がしてしまう。

「俺が目を開けてないように見えるのは、目が細いからだ。青学不二も同じ理由だろう。別に二人とも誰かのファンなわけではない。」
「ふ〜ん。そうなんだ〜。じゃあ、何でお日様は西から昇らないの〜?」
「ふむ、それはだな、地球の自転がうんぬんかんぬん……(説明略)。」
「じゃあ、何で海は満ちたり引いたりするの〜?」
「ふむ、それはだな、月の重力がうんぬんかんぬん……(説明略)。」
「じゃあ、何で朝顔は寝坊しないで朝咲くの〜?」
「ふむ、それはだな、植物には体内時計があってうんぬんかんぬん……(説明略)。」

 二人の対話は延々続いた。
 途中から二人は座り込んで、時には地面に図を描いたり、イラストを使ったりしながら、延々なぜなに教室を展開した。

「……柳は物知りなのね〜!」
「いやいや、樹のあくなき探求心と着眼点の鋭さには俺もいろいろ勉強させてもらったぞ。」
「で、何でフランスパンと食パンは皮の固さがあんなに違うのね〜?」
「ふむ、それはだな、パンを焼くときの温度がうんぬんかんぬん……(説明略)。」

「すごいや、樹ちゃん……!(爽)」
「蓮二もたまらん物知りさんだ!」
 途中で真田と佐伯が試合中断のための話し合いを始めても、炎天下のパーキングエリアで延々一時間以上、二人の丁々発止のやりとりは続き。
「この試合、引き分けということにしよう!(爽)」
「やむを得んな。」
 外野が勝手に引き分けを決定して二人をそれぞれの陣営に引き取って帰るまで、なぜなに教室は果てしなく続いた。

 第三試合:引き分け!


<第四試合>  丸井ブン太 vs 佐伯虎次郎

 三引き分けという微妙な展開で迎えた第四試合。
「お前の弱点はヒカルくんから聞いてる!」
 ケーキの入った箱を片手に、丸井は力強く言い放った。
「へぇ。そうなんだ?ダビデなんかに俺の弱点が分かるんだ?(爽)」
 動揺する様子もなく不敵に笑う佐伯。
「で、俺の弱点って何だって?(爽)」
 潮の香りの風が二人の間を吹き抜ける。真夏の陽射しがじりじりと土曜の海を照らしていた。

「佐伯虎次郎の最も恐れるコト、それは……フリーにされるコトだろぃ。」
「……な、何ぃ?!(爽)」
 愕然とする佐伯。勝ち誇ったように丸井が笑う。
「だから俺は今から一人でおやつを食べる。お前になんか、構ってやるもんか!」
 そして、どっかと腰を下ろすと、紙箱を開き、ケーキを食べ始めた。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺たち、勝負するんだろ?(爽)」
「……もぐもぐ。」
「それじゃ勝負にならないだろ?(爽)」
「……むしゃむしゃ。」
 爽やかに動揺する佐伯に目も向けず、丸井は黙々とケーキを食べる。
 それを見て、佐伯はしばらく固まっていたが、覚悟を決めたように自分もアスファルトに腰を下ろした。
「いいよ。我慢比べなら、俺だって負けないつもりだ(爽)。」

 五分経過。
 丸井は二つ目のケーキを味わい、佐伯は鼻歌を歌っている。

 十分経過。
 丸井は三つ目のケーキに取りかかりながら、佐伯にちらちらと目をやる。佐伯は空を見上げて溜息をついていた。

 十五分経過。
 丸井は四つ目のケーキを手にとって、何度も佐伯を振り返る。佐伯は俯いて地面に「の」の字を書き始めた。

 薄い雲が太陽を遮って、大地に影を落とす。
「……ん!」
 四つ目のケーキをかじりながら、丸井はぐいっと紙箱を佐伯に押しつけた。
「……言っておくけど、別に俺が寂しいからじゃねぇからな!俺は一人でケーキ食べるのなんか、全然寂しくないんだぞ!ホントだぞ!全然全く寂しくなんかないんだぞ!でも、お前が寂しそうだったからな!特別に分けてやる!食え!」
 佐伯は困惑した様子で紙箱に手を伸ばす。
「ありがとう……(爽)。」

 それから二人はもぐもぐと仲良くケーキを食べた。
 食べ終わるころには、二人ともなんだかやけに満ち足りた気分になっていた。

 第四試合:ノーゲーム!


<第五試合>  真田弦一郎 vs 葵剣太郎

 ついに最終戦を迎えた。
 勝負は完全に五分。この試合に全てがかかっている。
「よく善戦した、と言っておこう。だが、それもここで終わりだ!」
「すごいプレッシャーだ!面白い!」
 真田は軽く帽子のつばを上げ、笑った。
「ここで全てが決まる。どちらが悪で、どちらが邪か。さぁ、覚悟は良いか?」

 いや待て。どっちが悪で、どっちが邪かは分かってるし!
 と、思ったのは黒羽だけではなかった。
 だが、誰にも止められない。この試合は、もう誰にも止めることができない。

「六角は負けない!ボクたちは邪でありながら、東京でゴミ拾いボランティアをするなんていう間違った行いをやり通す、邪な心の持ち主だ!決して負けない!」
 葵がきらきらと目を輝かせて、熱く宣言する。
「ふん。ほざけ!その程度の邪、雑草だらけの花壇で無断で草むしりをし、あまつさえ勝手に見目麗しき花々を植えた、我ら立海の悪の所行には及ぶまい!」
 傲然と言い放つ真田。
 二人の間に火花が散った。

「……一つ、教えてやろう。葵よ。アクアラインの意味を。」
「まさか……これは、悪アライン……!?」
「くくく。ようやく気付いたか。アクアラインとは……アクアが水、ラインが線の意味だ!」
 真田が中三の余裕をぶちかます。ちなみに真田には苦手教科がない。

「……じゃあ、ボクも教えてあげますよ!真田さん!」
「何だ?」
「立海のユニフォームのデザインは……横シマです!」
 ちなみに葵の得意教科は道徳である。

 西日が彼らの影を長く映し出す。
「……俺たちが……邪だと言うのか?!」
 真田が低く問い。
「どう見ても横シマじゃないですか!」
 葵が凛として言い返す。
「……たまらん!俺たちが邪!となれば、お前達は悪!たまらん六角だ!!」
「……!」
 真田が帽子を深くかぶりなおす。そしてゆっくりと仲間達を振り返った。
 夕陽がゆっくりと西の海に近づいてゆく。
 静かに真田が葵へと視線を戻して。
「約束を破るのは性に合わん。お前達に悪の名を譲ろう。」
 低い声で言った。
「じゃあ、今日から悪の千葉、邪の神奈川……というコトですね!面白い!」
 いつもよりは幾分押さえた調子で、葵が応じる。
 それを受けて、真田は静かに言葉を続けた。

「そして、今……譲ったばかりの悪の名を、ムリヤリ奪い返す!」

 葵は目を輝かせた。
「うわあ!なんていう悪さだ!面白い!!」
「ふん。たとえアクアラインであろうと、それが悪の立海だ!」
「うわあ!なんていう語呂の悪さだ!面白い!!じゃあ、ボクは邪の名を真田さんに譲り渡さないで最後までルール無用に誤魔化しきるぞ!」
「む……なかなかの邪ぶりだ。さすがは邪の六角。」

 二人はお互いの健闘を称え合い。
 お互いの悪と邪を称え合い。
「ついにどちらがたまらん悪で、どちらがたまらん邪か、決着がついたようだな。」
「うん!ボクらが邪の千葉、そっちが悪の立海だ!面白い!」
 そして二人は戦果を確認し合い、満足げに頷いた。

 いや待て。
 どっちが悪でどっちが邪かは、最初から分かり切っていたから!
 と、思ったのは、ジャッカルだけではなかった。
 だが、まぁとにもかくにも、これで良かった。そう考えながら視線を上げれば、同じように安堵の色を浮かべる黒羽と目が合って。
 二人は同時に溜息をついて笑った。

 第五試合:千葉が邪で、神奈川が悪と決定。


 夕陽が沈もうとしていた。
 邪な戦士達と悪の戦士達は、お互いの善戦を称え合い、熱い握手を交わす。
 悪が神奈川で。
 邪が千葉で。
 そうだ。それでいい。
 彼らの心は深い満足感に満ちていた。

 そして。
 彼らはゆっくりとそれぞれの愛する県へと歩み出す。
 アクアラインに小さな想い出だけを残して。





何がなにやら……。いやあの。その……。
最後まで読んでくださってありがとうございました
あと2本続きます。番外篇。

お手間をおかけしますが、ブラウザの戻るでお戻り下さいです。