これは幼稚園パラレルです（笑）。
過去ネタではありません！
黒の軍団。
ここは木の実幼稚園。良い子たちが通うすてきな幼稚園です。
今日はライオン組の様子を見てみましょう。黒いスモックがとても個性的な、仲良しクラスですね。
おや？
年中組のみんなが、手をつないでやってきましたよ？園庭をお散歩かな？
伊武深司くん（４歳）が、柿の木を見上げて何か気づいたみたい。
手をつないでいる神尾アキラくん（４歳）に、言いました。
「……◎◇×％＊●☆＆％％。■◎＊○◇＄？￥＆＋○□……。」
「なんだよ！深司！ばかにするなよ！！」
あれあれ？アキラくんが怒り出してしまいましたよ？
「……□◎＄×￥＄＄＊■●×。％＄☆※＃◎、＠￥＆■☆……？」
「うるせぇ！そんなら、お前はどうなんだよ！」
深司くんとアキラくんがけんかを始めちゃいました。大丈夫？ライオン組の良い子たち？
「けんか、しないでよぅ。うわあん。」
あらあら。
アキラくんと手をつないでいた森辰徳くん（５歳）が泣き出しちゃいました。辰徳くんの隣を歩いていた内村京介くん（４歳）が。
「いけないんだ〜！辰徳泣かした〜！」
とはやし立てて。
みんな大騒ぎですよ。
「アキラくんは、深司くんの言っていること、分かるんだねぇ。しゅごいねぇ。」
一番端っこで、のほほんと微笑む石田鉄くん（４歳）に、桜井雅也くん（４歳）はうなずいて。
「ホント、すごいねぇ。」
端っこの二人だけはのほほんとしていて。
「しゅごいよねぇ。」
鉄くんの無敵ののほほんぶりが、だんだん感染して。
「……泣くなよ。辰徳。」
「……うん。」
京介くんになだめられて、辰徳くんは泣きやんで。
「……ごめん。深司。俺も、言い過ぎた。」
「……×☆※。」
アキラくんと深司くんも仲直り。
なんだかよく分からないけど、とにかく、ライオン組の良い子たちはみんな仲良しさんなんですね。
こんな仲良しライオン組ですが、実は大きな野望があるのです。
それは。
お遊戯会に出ること。
お遊戯不毛のクラスとまで言われていたライオン組。
ここ数年、練習をいやがる子が続出で、お遊戯会に出られた試しがないのです。
そのクラスに、去年、入ってきた橘桔平くん（５歳）。
彼が、ライオン組の良い子たちに、お遊戯会に出るという大きな目標を与えてくれたのでした。
それは唐突な出会いでした。
「俺よりお遊戯が巧いと思うやつ、前へ出ろ！」
桔平くんは、お遊戯の練習をしたがらないお友達に、こう言いました。
そして。
桔平くんのお遊戯の実力と情熱を認めた木の実幼稚園の先生方は、お遊戯嫌いな子が多いライオン組の中で、お遊戯会に出たい子だけでグループを作って、お遊戯会に出ても良いという特別なルールを作ってくれたのでした。良かったね。ライオン組の良い子たち！
忘れもしません。去年、みなで拳を振り上げて誓い合ったあの日。
「出ようぜ！お遊戯会！」
そうです！ずっとずっと、出てみたかったお遊戯会！
とうとう、その夢が叶うのです。
みんなでお砂場で遊んでいたら、向こうからぱたぱたと辰徳くんが走ってきました。
「見て！お遊戯会のプログラム！」
先生からプログラムの見本をもらったみたいですね。
「書いてあるよ！ライオン組って書いてある！」
少し字が読める雅也くんが、プログラムに並ぶ「すみれぐみ」「ぱんじーぐみ」「さかきぐみ」「あさりぐみ」などなどの、周りのクラスの名前に混ざって、「らいおんぐみ」と書いてあるのを見つけてくれました。
「やったぁ！」
「良かったねぇ。きょしゅけくん。」
「鉄！俺はきょしゅけじゃないぞ！京介だぞ！」
「うん。きょしゅけくん。」
桔平くんは九州幼稚園で二翼と呼ばれたお遊戯の名手。野獣のような力強い動きで、九州幼稚園のお遊戯会を席巻したという噂です。きっと今年のライオン組のお遊戯は、素晴らしいものになることでしょう。
休み時間や、お遊戯の時間に、ライオン組の良い子達は、みんなで集まって一生懸命練習しますよ。
あ。今、ちょうど、練習が始まるみたい。ちょっと覗いてみましょう。
ライオン組有志の演目は渋くよさこいソーラン。
合いの手の「おらぁ！」に桔平くんの個性が光ります。
「アキラ。お前は、スピードとリズムでお遊戯を極めろ。」
全員を集めて、一人ずつに桔平くんがアドバイスをします。さすがは年長さん。しっかりしていますね！
「はい！桔平くん！」
アキラくんは、桔平くんの言葉を忘れないように、口の中で小さく繰り返しました。
「スピードと……リズムに……ＨＩＧＨ！」
なんだかちょっと違うけど、ま、いいですかね。
「雅也。お前の冷静な判断力は、全体をまとめ上げる要だ。」
桔平くんは、一人ずつに的確なアドバイスをくれる素敵なお兄ちゃんです。難しい言葉もたくさん知っています。
「はい！」
雅也くんも信頼しきった表情で、深く頷きました。
「辰徳。お前の笑顔は、保護者を悩殺する要だ。」
「……はい！」
よく分からないけど、辰徳くんも期待されています。辰徳くんの笑顔は本当に魅力的です。
「鉄。お前の力強さは、お遊戯にめりはりを与える。要所を押さえて、必ず決めろ。」
「あい！きぺくん！」
「……分かったか。てちゅ？」
「あい！」
雅也くんは思いました。あの桔平くんに影響を与えちゃうなんて、鉄くんの舌足らずぶりはすごいなぁ、と。
「それから、京介。お前の小ささは芸術的だ。その小さい体で前衛芸術のようにきらきら輝け！」
「はい！」
「そうだ。お前の動きは……名付けて、前衛キラーだ！」
「はい！」
いつもは小さいコトを気にしている京介くんですが、桔平くんにこんなに期待してもらって、すっかりやる気満々です。そうです。小さい体で駆け回る京介くんは、本当に生き生きとしていて、輝いていますから！
前衛芸術かどうかは、ちょっと分からないですが。
「深司。」
「……＆○＊刀氈c…。」
「そうだ。前にも言ったとおり、お遊戯とはぼやきみたいなものだ。お前のぼやきこそが、俺達のお遊戯を彩るエッセンスとなる。お前の魂の全てをぶつけろ。ぼやけ。お遊戯とは、ぼやくことだ。分かるな？」
「……☆＊※□◎＃！！」
そして。
アキラくんを除く全てのメンバーが思いました。
深司くんの言っているコトが分かるなんて、桔平くんは本当にすごいなぁ、と。言っている内容はとりあえず二の次です。いえいえ。桔平くんが言っているのだから、たぶん、間違いないのでしょう！
桔平くんは普段からとても優しい子です。年中さんの妹とも、毎日手を繋いで一緒に登園する優しいお兄ちゃんです。でも、お遊戯の練習は結構ハードなんですよ。
「アキラ！リズムが狂っているぞ！」
全体のリズムを合わせるのは、アキラくんの担当。ちょっとタイミングが外れたら、怒られちゃいましたよ。頑張れ！アキラくん！
「……俺……。」
「どうした？アキラ。」
「……ホントは俺、４までしか数えられないんです……。」
拍子を取る係なのに、アキラくんってば、衝撃の告白です。４歳だから、まだ４までしか数えられないんですね。
しょんぼりするアキラくんの肩をぽんと叩いて、桔平くんが微笑みました。
「できないなら、それでも構わない。俺もスキップはできない。」
そして、自信満々に言い切りました。
「だがな、アキラ。４まで数えたら、また１からやり直せば良い。俺達は、そうやって来たぜ？」
そうです！
四拍子の曲は、４まで数えたら、また１から数え直せば良いのです。
さすがは桔平くん！冷静ですね！！九州幼稚園で二翼に数えられたのも伊達じゃありません。
おや？桔平くんの黒いスモックの袖を掴んで、深司くんが何か言っていますよ。
「……＃￥□＄◎☆※。＠＊●＆％◇○。」
「そうか。深司は百まで数えられるのか。すごいな。」
桔平くんに頭を撫でてもらって、深司くん、嬉しそう。
そのとき、雅也くんは心の中でこっそり思いました。
百まで数えられるのはすごいかもしれないけど、それ以前に、お前、日本語しゃべれてないだろ！
「そろそろ、続けてもいいよな？」
桔平くんの言葉に、全員が頷いて。
さぁ、もう一度、音楽に合わせての練習スタートです！
さてさて。
練習はこれからも続きます。
仲良しライオン組の良い子達は、お遊戯会でどんな活躍を見せてくれるでしょうか。
黒いスモックのライオン組の勇姿、乞うご期待ですよ。
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