名前を呼んで(ガク&ツキタケ)




 ミスターガラスのハートは今日も陰気に絶好調である。
「しりとりをやろう。」
 陰気に提案すると、ツキタケがふわとあくびをした。
「いいっすよ。」
 それでも兄貴の誘いなら断る気はない。うたかた荘の小汚い床にあぐらをかいて、正座するガクを見上げる。
「ツキタケから言え。」
「しりとり。」
「リニア。」
「あ……あ……朝日!」
「ヒメノン!」
 即答するガク。
 ふぅっとツキタケが息を吐く。
「兄貴の負けっす。」
「もう一度だ。ツキタケ。」
「へい。しりとり。」
「リス。」
「す……す……うーん。」
「どうした?」
 わくわくしている気配のガクと、妙にてこずっているツキタケに、ぼんやりとテレビを眺めていたエージがちらりと目を向ける。
「あった!水曜日!『び』なら『ひ』でも良いんすよ!兄貴!」
「よし!ヒメノン!」
 エージは軽くむせて、慌てて目をそらす。
「兄貴の負けっすね。」
「よし。もう一度だ!」
「しりとり。」
「リズム。」
「あ!今度は簡単っすね。ムヒ。」
「ヒメノン!」
 どうでもいいバラエティ番組を眺めながら。
 ツキタケって、妙なとこで律儀で良いやつだな、と。
 そう思いかけて、エージはぶんぶんぶんと激しく頭を振った。









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