○○さま(冬悟)





 前略
 オッサンさま

 オッサンさまって変か?
 変だよな。
 まぁいいや。
 俺、手紙とかあんまり書いたことねぇから、難しいことは分からんし。
 だいたい、漢字とか苦手だ。
 読むの、オッサンだから適当でいいよな。
 適当に書くからな。
 適当に読めよ?
 真顔で読んだりしたらぶっ飛ばす。

 あんたのコートな。
 あれ、あほみたいに丈夫だよな。
 借りてるぜ?
 丈もだいたいちょうどよくなったしな。
 ってかポケットの中に入ってた写真、あれ、何?!
 何で俺の泣いてる写真とか、入れるわけ?!
 普通、ほれた女の写真とかな、そういうの入れるもんだろ。
 そこで、何で、俺!
 しかも、何で、泣いてる写真!!
 そんなトコにまでネタ仕込まなくていいから。
 十味のじいさんに、泣きながら爆笑されたぜ?
 オッサンが仕込んだネタで、俺が笑い取ってどうするっての!

 あとな。
 賞味期限切れのマヨネーズよりな。
 俺としては、冷蔵庫の奥にエロビデオを保存していた件について、問いただしたい。
 正座させて、徹底的に、問い詰めたい。
 いったい、何をどうしたら、冷蔵庫にエロビデオしまうわけ?
 俺には分からん。
 俺も、ときどき、冷蔵庫にエロ本はしまうけど、エロビデオは入れない。
 絶対、入れない。
 エロ本が限界だろ。冷蔵庫は。

 まぁ、陽魂の連中とかに見られたくないものは、冷蔵庫に限るけどな。
 あいつら、あんまり冷蔵庫に興味ねぇし。
 そこんとこは、俺も賛成だ。

 そうそう、住人、だいぶ増えたぜ?
 陽魂だけじゃなくて、生きてる子も一人住んでる。
 連中、手がかかるし、うるさいし、寂しがってる暇なんかねぇ。
 本当にな。
 うるさくて、楽しくて、最悪で、最高で。
 あんたもいたら、もっと面白かったかもしれねぇな、とか思う。
 そう思う瞬間、ほんの少しだけ、マジでほんの少しだぜ?そう……ほんの少しだけだけど、たまらなく寂しい気もする。

 ああああああ!!!
 嘘だ。嘘!!!
 全然寂しくなんかねぇ!!!
 とっととあっちに行っちまえ!!!
 顔も見たくねぇや。
 顔も見たくねぇっての。
 うたかた荘のこと、何も心配いらねぇから。
 俺は、もう、一人なんかじゃねぇから。
 だからのこのこ出てくるんじゃねぇぞ。
 出てきたら、容赦なく速攻解体すからな。
 いいな、絶対帰ってくんなよ!!!

 あぁ、いい天気だ。
 空の上まで、よく見えるぜ。
 あんたなんかいなくても、俺、ちゃんとやってけるから。
 俺ならできるって、あんたも言ってただろ?
 なぁ、オッサン。

 本当にありがとう。









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