ドラッグ(明神&エージ)





 馬鹿につける薬はない、という。
 それを確認するために、わざわざ薬局まで行った明神を見ていると、全くその通りだと思う。
「知ってるか?エージ。」
 真顔で明神が言う。
「薬剤師ってのは、やくざな医師なんだぞ?」
 馬鹿につける薬はない。
 本当に。
「何だ?お前、信じてないだろ?」
 俺はふぅっと息を吐いた。
 誰にだまされたかは、想像に難くない。
 こいつの師匠とやらは、本当に楽しかったんだろうな。
 何でも鵜呑みにするあほな弟子がいて。
 薬局から帰る道は、気持ちのいい陽射しに溢れていた。
「やくざな医師だから、やくざ医師って呼ばれるんだぞ?英語だとギャングドクターだぞ?」
「ああ、分かった。分かった。」
 明神に「薬剤」という言葉を説明するのも、めんどうくさい。
 しょうがねぇな。
 俺が代わって、全国の薬剤師さんに謝っとこう。
 すみません。こいつ、馬鹿で。
 ふわ、とあくびをする。
 ホント、いい天気だな。今日は。
「じゃあさ、明神。知ってるか?」
「ん?」
「存在しないっていうことを証明することは、ほぼ不可能らしいぜ?」
「へぇ。なるほどな。」
 俺もよく知らないけど。
 以前、ガクが何かぶつぶつ言ってた。
 あいつが言うのなら、きっとそうなんだろ。
「だったら、馬鹿につける薬がないことは、証明できないわけか。」
「そういうこと。」
 明神もふわ、とあくびをする。
 道端にたんぽぽの綿毛。
「でも、つける薬だけなら、いくらでもあるよなぁ。ムヒとか。」
「ん?」
「馬鹿を治す薬はなくても、つける薬くらい、あるだろ?」
 わざわざこいつに付き合って、薬局まで行ってみる俺も、馬鹿といえば馬鹿なのだけれども。
 何ていうか。
 馬鹿につける薬はない。
 本当に。








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