小さい子というのは、いったいどうして、同じ遊びを延々続けても飽きないのだろう。
エージは呆れるよりも、むしろ感心に近い気分で、ソファに身を投げた。
アズミのかくれんぼに付き合わされて、早半日。
しかもずっとエージが鬼である。
「あー、もう疲れた!」
ばたっと倒れたふりをしてみても、アズミは出てこない。
ついでに死んだふりもしてみたが、やはり出てこない。
やっぱ、探してやらなきゃダメか。
遊んでやると言った以上、途中で勝手に抜けるのは、かっこわるい。
立ち上がったエージは、玄関口でガクと鉢合わせになる。
少しだけ視線をエージに向けたものの、すぐに興味を失ったようにどこかへ立ち去ろうとするガク。
「あ、ちょっと待てよ。アズミ見なかったか?」
「いや。」
陰気な声で答えてから、ミスターガラスのハートはうっそりとエージを振り返る。
「いないのか?」
「ああ。」
首をかしげるガク。
「あいつ、お母さんトコ、行っちまったんじゃねぇだろうな!」
冗談めかして言ったつもりの言葉に、ガクが真顔で応じた。
「それならそれが一番だろう。」
地上を見て回ることに満足したのなら。
それが一番、あのチビにとって、幸せなことに違いない。
願わくば、お母さんに、うたかた荘はとっても楽しかったよ、と。
一言そう言って笑ってもらいたい。
なんて願うことは、欲張りだろうか。
黙ってガクは天井を見上げ、そしてそのままどこかへ行ってしまった。
あの陰気なヤツ、どうにかなんないかな!
冗談くらい、分かってくれっての!
頭をかきながら、エージはアズミを探し始める。
生きている子供のかくれんぼなんて、隠れられる場所は限られているが。
陽魂はあいにくとどこへでも入れるものだから、なかなかてこずるのだ。
茂みの奥を覗き込んで、管理人室の窓の下も確認して。
うろうろと歩き回るエージの腕を、明神が掴んだ。
「おい。エージ。」
「あ?」
「アズミがいないんだって?」
気がつくと。
「どこ行ったんだよ。全く。」
ツキタケやら。
「アズミちゃーん!」
姫乃やら。
何でかみんながアズミを探して回っている。
いや、何でかとか、言っている場合ではなく。
間違いなく、それはガクのせいで。
「エージ!!!」
ガクに抱かさって、リビングに連れ戻されたアズミが。
「みんなが探してくれたから、とっても楽しかったよ!!!」
目を輝かせてエージに飛びついたのは。
それから十五分ほど経ったころのことであった。